会社分割の登記とは|吸収分割・新設分割の日程・債権者保護手続・必要書類

会社分割には、既存の会社に事業を承継させる「吸収分割」と、分割によって設立する会社に承継させる「新設分割」があります。登記では、2つの会社の登記を同時に申請すること、債権者保護手続や株主への通知の期間を日程に組み込むこと、不動産を移す場合は所有権移転登記が別に要ることが要点です。登記の観点から、流れと日程の逆算の考え方を整理します。

結論。吸収分割は契約で定めた効力発生日に、新設分割は設立の登記の日に効力が生じます。会社分割の登記の申請期限は、吸収分割は効力が生じた日から、新設分割は株主総会の決議の日や債権者保護手続が終了した日などのうち最も遅い日から、2週間以内です(会社法923条・924条)。2社の登記は、承継会社(新設分割では設立会社)の本店所在地を管轄する登記所に同時に申請します。債権者保護手続の異議申述期間は1か月以上で、承継会社(株式会社)では常に、分割会社では分割後に分割会社へ請求できなくなる債権者がいる場合などに必要です。

会社分割の登記の要点は?

分割をする会社
株式会社と合同会社(会社法757条・762条)
効力発生日
吸収分割は契約で定めた日、新設分割は設立の登記の日
申請期限
吸収分割は効力発生日から、新設分割は法定の日のうち最も遅い日から、2週間以内
申請先
承継会社(設立会社)の本店所在地の登記所に、2社の登記を同時に申請(商業登記法87条)
債権者保護手続
異議申述期間は1か月以上(会社法789条・799条・810条)
不動産がある場合
所有権移転登記を別に申請。合併と異なり共同申請(不動産登記法60条・63条2項)

吸収分割と新設分割は、登記上は何が違う?

分割をする会社(分割会社)になれるのは、株式会社と合同会社です(会社法757条・762条)。吸収分割では分割会社と、権利義務を引き継ぐ承継会社の双方で変更の登記を、新設分割では分割会社の変更の登記と、分割で設立する設立会社の設立の登記をします。どちらの登記にも「分割をした旨」と相手方の商号・本店が記録されます(商業登記法84条)。対価として承継会社の株式を交付し、資本金の額や発行済株式の総数が変わる場合は、その変更もあわせて登記します。合併と違って分割会社は存続するため、解散の登記はありません。合併は合併の登記の解説で、株式交換などは株式交換・株式移転・株式交付の登記の解説で整理しています。

効力発生日と登記の申請期限はどう決まる?

吸収分割は、契約で定めた効力発生日に効力が生じます(会社法759条1項)。ただし、債権者保護手続が終わっていなければ効力は生じないため(同条10項)、遅れそうなときは相手方の会社との合意で効力発生日を変更し、変更前の効力発生日の前日までに公告します(同790条)。効力発生日は登記所の開庁日でなくてもよく、登記は効力が生じた日から2週間以内に申請します(同923条)。

新設分割は、設立会社の成立の日、つまり設立の登記の日に効力が生じます(同49条・764条1項)。申請期限は、株主総会の決議の日、株主への通知・公告から20日を経過した日、債権者保護手続が終了した日、分割会社が定めた日などのうち最も遅い日から2週間以内です(同924条1項)。登記の日は原則として申請の受付日なので、申請日がそのまま効力発生日です。2026年2月2日からは、申請日の翌日が行政機関の休日であれば、その休日(休日が続くときはそのいずれか一日)を登記の日とするよう申請書で求めることができ(商業登記規則35条の4)、法務省の通達で新設分割による設立の登記も対象とされています(法務省の案内)。

債権者保護手続はどの会社で必要になる?

会社分割の債権者保護手続は、吸収分割の承継会社(株式会社)では常に必要で、分割会社では、分割後に分割会社へ債務の履行を請求できなくなる債権者がいる場合や、いわゆる人的分割の場合に必要です(会社法789条1項2号・799条1項2号・810条1項2号)。日程を最も左右しやすいのが債権者保護手続です。異議を述べることができる債権者は次のとおりです。

承継会社(株式会社)
すべての債権者。手続き自体を省略できる場面はありません(会社法799条1項2号)
分割会社
分割後に分割会社へ債務の履行(承継会社と連帯して負う保証債務の履行を含みます)を請求できなくなる債権者(同789条1項2号・810条1項2号)
分割会社(いわゆる人的分割)
効力発生日(新設分割では設立会社の成立の日)に、承継会社(設立会社)の株式を配当財産とする剰余金の配当などをする定めがある場合は、すべての債権者(同上)

分割会社に残る債務の債権者や、承継会社に移す債務を分割会社も引き続き負う定めがある場合の債権者は異議を述べることができず、対象者がいなければ分割会社側の手続きは要りません。どちらに当たるかは契約(計画)の定め方で決まるため、契約書案の該当箇所を早めに確認しておくと、日程を見通せます。

手続きは官報公告と、知れている債権者への各別の催告で行い、異議を述べることができる期間は1か月を下ることができません(同789条2項・799条2項・810条2項)。決算公告(電磁的方法による開示を含みます)をしていない会社は、原則として最終事業年度の貸借対照表の要旨も公告に載せます(会社法施行規則188条・199条・208条)。定款で定めた日刊新聞紙または電子公告でもあわせて公告すれば催告を省略できますが、不法行為によって生じた分割会社の債務の債権者への催告は省略できません(会社法789条3項・810条3項)。また、異議を述べることができる分割会社の債権者で各別の催告を受けなかった者は、契約上は請求できないとされている会社にも、分割会社には効力が生じた日に有していた財産の価額、承継会社(設立会社)には承継した財産の価額を限度に請求できます。ただし、日刊新聞紙・電子公告の併用で催告を省略した場合、請求できるのは不法行為によって生じた債務の債権者に限られます(同759条2項・3項、764条2項・3項)。

労働契約承継法の手続きは日程にどう影響する?

承継される事業に主として従事する労働者などへの書面の通知が、労働契約承継法で定められています(同法2条)。期限は、総会の承認を要する場合は総会の日の2週間前の日の前日、要しない場合は契約の締結日(計画の作成日)から起算して2週間を経過する日です(同条3項)。登記の添付書面ではありませんが、遅れると日程に響くため、期限も日程表に入れておくことをおすすめします(具体的な対応は弁護士・社会保険労務士の先生方のご判断によります)。

手続きの順序と、効力発生日からの逆算は?

吸収分割の日程は、株主総会の承認を要する通常の場合、効力発生日の前日までに債権者保護手続(異議申述期間1か月以上)と株主総会の特別決議を終え、効力発生日の20日前までに株主へ通知(公告で代えられる場合があります)し、効力発生日から2週間以内に登記を申請する、という期限から逆算して組みます。次は一般化した設例です。株式会社Aの事業の一部を、同じグループの株式会社Bに吸収分割で承継させ、両社とも株主総会で承認し、公告は官報と各別の催告で行う前提です。「目安」は法定の期限ではありません。

2〜3か月前(目安)
分割の対象(資産・債務・契約・従業員・不動産)、資本金の扱い、両社の公告方法を整理。契約書案のうち登記申請に必要な記載を確認
6〜8週間前(目安)
両社の取締役会で吸収分割契約を承認し、締結。官報公告を手配
1か月以上前
官報公告と催告。異議申述期間が効力発生日の前日までに満了するように設定。公告・催告の日などのうち最も早い日から事前開示書面を備置き(会社法782条・794条)
20日前まで
株主への通知または公告(同785条3項・797条3項)
総会の日の2週間前の日の前日まで
労働者・労働組合への通知
前日まで
両社の株主総会の特別決議(同783条1項・795条1項・309条2項12号)。異議を述べた債権者への弁済など
効力発生日
吸収分割の効力が生じる
2週間以内
承継会社の管轄登記所に、2社の変更の登記を同時に申請
効力発生後
承継した不動産の所有権移転登記。事後開示書面を6か月間備置き(同791条・801条)

新設分割では、株主総会の決議、株主への通知・公告から20日の経過、債権者保護手続の終了を、すべて申請日より前に済ませます。株主への通知は決議の日から2週間以内です(同806条3項)。

株主総会の承認を省略できる場合は?

分割会社は、承継させる資産の帳簿価額が総資産額の5分の1(定款で引き下げた場合はその割合)以下であれば(同784条2項・805条)、承継会社は、交付する対価の額が純資産額の5分の1(同)以下であれば(同796条2項)、株主総会の承認が不要です(簡易分割)。吸収分割で、相手方の会社が自社の特別支配会社(完全子会社などを通じた分を含め、自社の議決権の10分の9以上を有する会社。定款で割合の引上げも可能です。同468条1項)である場合も不要です(略式分割。同784条1項・796条1項)。ただし承継会社側は、承継する債務が資産を超える場合などは簡易分割の対象外で、一定数の株式を有する株主から反対の通知があれば総会の承認が要ります(同796条2項ただし書・3項)。承継会社が公開会社でなく、対価にその譲渡制限株式が含まれる場合は、承継会社側では簡易分割も略式分割も使えません(同条1項ただし書・2項ただし書)。簡易・略式に当たっても、債権者保護手続の要否は変わりません。

登記の申請先と主な添付書面は?

分割会社の登記は承継会社(設立会社)の登記と同時に申請し、本店の管轄が異なるときは、承継会社(設立会社)の本店の管轄登記所を経由します(商業登記法87条1項・2項)。一方に却下の事由があれば、両方が共に却下されます(同88条1項)。分割会社側は委任状のほかに添付書面が要らず(同87条3項)、書類は承継会社(設立会社)側の申請に添付します。

契約書・計画書
吸収分割契約書または新設分割計画書(商業登記法85条1号・86条1号)
株主総会議事録・株主リスト
両社分(新設分割では分割会社分。同46条2項・85条6号・86条6号、商業登記規則61条3項)。簡易・略式の場合は、要件に当たることを証する書面と取締役会議事録など(商業登記法85条2号・6号)
債権者保護手続の書面
公告・催告をしたことと、異議を述べた債権者への弁済などを証する書面(同85条3号・8号・86条8号)
資本金の計上に関する証明書
資本金の額が会社法445条5項に従って計上されたことを証する書面(同85条4号・86条4号)
分割会社の登記事項証明書
分割会社の本店が管轄外の場合。申請書に会社法人等番号を記載すれば省略できます(同85条5号・86条5号・19条の3)
新設分割で加わる書面
定款、設立時取締役などの就任承諾書と、その印鑑証明書や本人確認証明書など(同86条2号・3号、商業登記規則61条4項・5項・7項)

設立会社の定款は分割会社が作成し、公証人の認証の規定は適用されません(会社法814条)。新設分割による設立では、設立時取締役(取締役会設置会社では設立時代表取締役)の印鑑証明書が必要です(合併による設立では不要。商業登記規則61条4項・5項)。登録免許税は、吸収分割で増加した資本金の額、または新設分割で設立する会社の資本金の額の1000分の7(3万円に満たないときは3万円)です。分割会社の変更の登記と、資本金が増えない承継会社の変更の登記は、申請1件につき3万円です(登録免許税法別表第一第24号(一)ト・チ・ツ)。

不動産や根抵当権がある場合は何に注意する?

不動産の名義は会社分割の登記では変わらず、所有権移転登記を別に申請します。合併による権利の移転は登記権利者が単独で申請できますが(不動産登記法63条2項)、会社分割はこれに含まれないため、承継会社と分割会社の共同申請となり(同法60条)、分割会社の登記識別情報なども必要です(同法22条)。対象不動産の一覧と登記記録は早めに確認しておきます。

元本の確定前の根抵当権は、根抵当権者や債務者が分割をすると、分割の時に存する債権(債務)に加え、分割会社と承継会社(設立会社)が分割後に取得する債権(負担する債務)も担保します(民法398条の10第1項・2項)。根抵当権設定者は元本の確定を請求できますが(債務者の分割で、債務者が設定者である場合を除きます)、分割を知った日から2週間、または分割の日から1か月を経過するとできなくなります(同条3項・398条の9第3項〜5項)。担保の扱いは当事者と金融機関が判断するものですが、登記の観点からは、設定済みの担保権を一覧にし、分割の前後で要る登記を確認しておくことが大切です。

当法人では、会社分割に伴う商業登記と不動産登記をあわせて承ります。登記に関するご相談への回答と登記の申請は司法書士が行い、契約内容やスキーム、税務・労務の判断は弁護士・税理士・社会保険労務士などの先生方のご判断を前提に、登記手続きの範囲で関与します(企業法務・ファイナンス登記)。

Q. 会社分割の効力発生日を土曜日や祝日にできますか?

A. 吸収分割は契約で定めた日に効力が生じるため、閉庁日でもかまいません。新設分割も、直前の開庁日に申請して、続く休日のいずれか一日を登記の日(効力発生日)とするよう求めることができます(商業登記規則35条の4)。

Q. 簡易分割なら債権者保護手続も不要になりますか?

A. なりません。簡易分割・略式分割は株主総会の承認を省略する特則です。承継会社(株式会社)ではすべての債権者が異議を述べることができ、承継会社側の手続きは省略できません。

Q. 会社分割の登記をすれば、承継した不動産の名義も変わりますか?

A. 変わりません。承継会社(設立会社)への所有権移転登記を別に申請します。合併と異なり分割会社との共同申請で、分割会社側の書類も要ります。

この記事は2026年10月6日時点の法令・登記実務に基づいて作成しています。制度改正があれば見直します。

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